サンフランシスコで10年間暮らした後、海辺の街を見下ろす山の家に越してきた。
あっという間に1年が過ぎてしまったけれど、まだまだここでは新参者だ。
今日も海からの強風に冷や冷やしているし、部屋の中に入ってくる虫を踏んでしまわないか恐れている。庭に蛇がいるのを見てしまった時は引っ越しも考えた。
そのどれにも慣れたとは言い難いが、山の暮らしは想像以上に素晴らしいということに気がつくのに、それほど時間はかからなかった。鳥の声はうるさいぐらいだし、遮るものがないおかげで、季節によって変わる太陽の動きを知ることができる。そして夜が来ると真っ暗闇になり、風の音しか聞こえない。静かすぎるからなのか、独り言が増えた気がするけれど。
やってくる友人たちは一人残らず『海が見えるんだね!いいなぁ』、と言う。
緑が見えるところで暮らしたい、とだけ思っていたのでその反応は自分には意外だったし、
へぇー海が見えるのがそんなにいいものなのか、とさえ思った。
先日、家の周りの写真を撮ろうと散策に出掛けた。山を歩き、新鮮な空気を存分に吸った。
やっぱり山が近いといいなぁと思いながら、そのまま海の方まで降りて海岸も散歩した。
気がついたら海の写真をたくさん撮っていた。そういえば山の写真はちっとも撮っていなかった。
photo & text : Yoko Takahashi