明け方の匂いがいい。
海の匂いと太陽の匂いが気持良く混ざり始めた頃。
早起きして海を眺めているといつもそう教えてくれた。
2、3キロ先まで遠出することもある。
それでもすぐに戻ってくる。
波の音のない世界は居心地が悪そうだ。
犬は日焼けなんてしないもんだ。
週末になるとたくさん知り合いがやって来る。
みんなの匂いを覚えていた。
風の強い日は風の来ないところでおとなしくしている。
鼻先をいろんな匂いが次々に通り過ぎて行くから
落ち着かないんだ。
砂と海。生まれてから死ぬまで全てのものに
その匂いがあった。
永井 宏 dog on the beach より