GOOD SWELL JOURNAL / ADD SOME MUSIC TO YOUR DAY

フォーキーなサウンドのきらめき

偶然、ライロ・カイリーの解散を知ってしまった。2011年の7月だそうだ。このバンドとの出会いはファースト・アルバム『Take-Offs and Landings』(2001年)だった。そのジャケット・ビジュアルの気持ちいい軽さに心を動かされ、ショップのスタッフに無理をいい試聴させてもらった。
このバンドは1998年にLaで結成されたヴォーカルのジェニー・ルイス(ヴォーカル)とブレイク・セネット(ギター)このふたりが主にソングライティングを受けもつ4人組のオルタ・カントリー・ロック・バンドだ。1曲目「Go Aheads」イントロのアコースティック・ギター1本にかぶさるジェニーのケダルサの中にも凛としたたたずまいもあるヴォーカルにはまいってしまった。そこらの日常に点在する聖と濁に異をとなえるわけでもなし、そして無意識のうちに、そんな場所を通り越してしまった聖少女性を感じてしまった。凛としたたたずまいにはキラキラしたものが舞っている。それでいて眩しすぎないから、こちらもなんの抵抗もなく、そのキラキラに溶けこめてしまう至福。
これは後日判明したとこだが、このファーストは彼らの自主レーベルRilo Recordsからのリリースだったが、シアトルでインディーズシーンを牽引するbarsuk recordsからすぐに再リリースされている。この意味はかなりおおきい。La地元密着のバンドが全米へ、そして世界への道筋へとつながるような出来事です。
余談ですが、barsuk recordsの犬のアイコンはここに所属するミュージシャンが飼っているラブラドール・レドリバーだそうで、<バースーク>とはロシア語で穴熊。なかなかかわいいのです。余談ついでにもうひとつ。このレーベルに所属しライロ・カイリーと同じ時期にファーストを出したジョン・ヴァンダースライス。彼の歌は多分に内省的ですが、十二分に聴くに値します。
ミュージシャンのステファン・スティーバンスは「インディーズには限界があるが、なにより理想的なのは創造する自由を阻まれないことだ」と言った。自由を阻まれることを意識しないことが自分たちの限界を突き抜けてしまうことなのでしょう。このバンドはそんなことを体現しているように思える。
全体的なサウンドはヒップなテイストでありながら、ストイックに音数をギリギリのところまでそぎ落とした美しいフォーキーなメロディーラインで、そんな流れのサビで軽くトランペットやサックスなどのホーンの絶妙ないれ方と彼女のヴォーカルとのこころ憎いマリアージュ。
でも、解散。ライロ・カイリーの進行形の音は終わってしまた。そして、ジェニー・ルイスは2014年にソロ・アルバムを出した。しかし、彼らのとの出会いのときめきは私の体の中にいまも確実にある。(hy)