GOOD SWELL JOURNAL /

LOW KEY PEOPLE #21

もう30年近く、鵠沼、江の島といった辺りに居を替え、海辺に住み続けているWさんは、フリーの雑誌編集者だ。仕事で海外、国内と若い頃は飛び回っていたが、いつしか50も過ぎ、60代に近づいてきて、ハテ、このままでよいのかと考えた。雑誌にはライターとしてさんざん書きまくってはきたのだが、自分の名前はほとんど外に出ることもなく、個人の仕事としてはきちっと評価されるべきものを纏めてこなかった。しかし、根っからの編集者なので、いまさら偉そうに本を書こうとも思わない。で、重い腰を上げて作ったのが、オジサンたちの雑誌『オレキバ』。頭は薄いし、金もない、それに仕事も少なくなって、なんだがショボイ気持になってはきたが、いまさら真っ当なことはできないと、そんなオッサンでも、こうすれば元気になるぞという本を作ろうと思ったのだ。
昔の編集者仲間を集め、定年後は悠々自適などという本は増えてきたが、そんなのはウソ、一部の恵まれた人たちの話。本当はもっとシミジミしている人たちはたくさんいるのだから、そうした人たちのための本を作ろうと、資金的な問題をなんとかクリアして、ようやく作り上げた。まあ、ポパイやブルータスなんかを読んでいた人たちが還暦間際になったとしても、気持は昔と同じなんだよねという内容のもの。いい加減で、出鱈目で、軽い。そんな気分そのままをオジサン世代の本として作る試み。Wさんは、いま、稲村ガ先の丘の上から、もう少し引っ込んだ森に囲まれた借家に住む。一見世捨て人のような暮らしだが、そんな振りをしながら、このところ低迷気味の雑誌業界にちょっとひと風というか、ひと泡ふかせようという魂胆だ。もう発売されたはずなので、是非、Wさん渾身の一冊、眺めてみて欲しい。(h.n)