GOOD SWELL JOURNAL /

LOW KEY PEOPLE #12

今年の夏は鎌倉由比ガ浜の海の家、パパイヤがない。昨年、パパイヤを長く続けてきたご主人が亡くなってしまい、店を続けることができなくなってしまったのだ。パパイヤは、ここ数年、海の家が暇になる夏の終わりに、鎌倉、逗子、葉山の仲間の集るパーティを行っていたところで、関西からも、顔見知りがたくさんやってきて、音楽や踊りの宴だったのだが、今年はもう開催できない。
パパイヤとの繋がりは、女性編集者のAさんが、海辺で働きたいと、夏の間は仕事を休み、4、5年ほど、楽しく続けてきたことで生まれた。彼女が働くことで、私もやりたいと、UさんやOさんなど、フード・コーディネイターやスタイリストの人たちも、暇を見つけては働いていた。みんな売れっ子だから、関心のある人が見たらびっくりするような顔ぶれだ。ある意味、業界の人が、人知れず楽しみで働いている場所でもあったのだ。
もっとも、客はそんなことを知っている人はまずいないから、高校生のアルバイトに混じって働いている彼女たちの姿を見ても何も驚かないし、本人たちも、そういう場所で働けることの愉快さを、いつも感じていたのだと思う。
しかし、そんな場所も、もうない。葉山にはブルー・ムーンやオアシスといった海の家があるが、ここはここで、ある意味、業界っぽいといか、都会的で洒落てもいるので、そういった人たちがいてもおかしくはない。しかし、パパイヤは家族連れがやってくるような、普通の海の家で、シャワー完備で、荷物を預かり、桟敷に腰掛け、ラーメンやカキ氷を食べるようなところだ。それだけに、風情のある懐かしい場所という印象を、いつも持つことができた。夫婦で仲良く家族的にやっていたことも、こうあるべきだという、健全な海の家、正しい日本の夏の海辺という匂いがいつも漂っていた。とにかく、そんな場所がもう無いということが、ひとつの時代を超えてしまったような気がして詰まらない。他に求めても絶対にない空気、空間だったのだ。お父さんの冥福を祈る。(h.n)