GOOD SWELL JOURNAL /

好きな音楽の話ばかりで申し訳ないが、最近はバンジョーばかり弾いている。何かの啓示があったかのように突然バンジョーなのだ。自分でも意識しないうちに、バンジョーという楽器が勝手に家にやってきた。友人と電話でたまたまバンジョーの話をしていたら、古いのがあるからあげると、すぐに送ってきたのだ。たぶん、家で邪魔にしていたのだと思う。埃を被り、弦も切れている。しかし、弦を替え弾いてみると、まだその弾き方などを覚えている。覚えているというのは、もう随分昔、高校生のときに少し弾いていたことがあるからだ。当時、ピアレスという日本製のロングネックのバンジョーを買って、フォークのグループで演奏していた。とはいって、せいぜいコードを弾くくらいで、本格的に弾いていたわけではない。それだけに、その何年か後には手放してしまった。
そんなこともあり、少しは弾くことができたのだが、久々に触ってみると、けっこう楽しい。バンジョーのルーツはアフリカで、それがアメリカに渡ってきて発達した楽器で、その歴史は古い。通常、カントリー、フォークといったジャンルの音楽の中で使用され、中でも、ブルーグラスと呼ばれる、カントリー・ミュージックの中でも、フィドル(バイオリン)、ギター、マンドリン、ウッド・ベース、ドブロ・ギター(スティール・ギター)、ハーモニカといったアコースティック楽器でバンジョーと共に演奏されるものが、まあ、主流だ。バンジョーの早弾きで知られる、フラット&スラッグスの「FOGGY MOUNTAIN BREAKDOWN」など、バンジョーという楽器を一躍表舞台に引き摺りだした超有名曲でもあるだけに、誰でも一度は聴いたことがあると思う。TVなどでウエスタンやカントリーなどをステレオタイプ的に表現するときによく使われていたりするからだ。
この曲を作ったアール・スラッグスというバンジョー奏者が、バンジョーのスリー・フィンガー・ピッキング奏法を完成させ、それが広く世界中に知れ渡っていったのだ。といっても、まだ60年くらいしか経っていなくて、本人も高齢だが健在だ。しかし、ここからバンジョーの世界が変わった。いま、一生懸命練習しているのも、このアール・スラッグスの奏法だ。といっても、惚れ込んでいるのは、その次の世代とも言える、ジョン・ハートフォードという人。60年代に、「ジェントル・オン・マイ・マインド」という、もうスタンダード入りしているような大ヒット曲を作った人だ。この人は、カントリーやブルーグラスのどこかアーシーな泥臭い世界にいても、飄々と自分の垢抜けた世界を作りあげていて、シンガー・ソングライター的な魅力もあり、もちろんバンジョーも上手く、フィドル、マンドリン、ギターと何でも弾きこなす。それだけでなく、タップを踏みながら弾き、歌う。どこかボードビル的な世界感もあり、古き良きアメリカにレイドバックさせてくれるのだ。しかし、だからといっておどけているわけではなく、アーティスティックで、叙情性も高い。この人の活躍は、あまり知られていないが、ブルーグラスだけでなく、カントリー・ロックにも貢献していて、革新的なアルバムに数多く参加してもいるし、自分でも新しいジャンルを築いている。というわけで、この人に近づきたいと、日々、研鑽を積んでいる。と言うと大袈裟かもしれないが、とにかく夢中だ。ギターとは違い、バンジョーはまた別のメロディ楽器で、ひとりで弾いていても飽きのこないものがある。ギターは随分長く弾いてきたせいもあるが、バンジョーは新しい奏法を見つけるたびに驚きがある。まだまだ先は遠いいのだが、とにかく毎日弾いている。先日、丘の上の家でひとり夢中になって弾いていたら、宅配便のおじさんが、庭まで回って荷物を届けにきてくれて、その音を耳にして、「いいですね、ここにぴったりですね」と、もっと話しこみたそうな顔をして帰っていった。あのおじさん、きっと、腕に自信があると見た。足元はジーンズにウエスタンブーツだったからだ。http://www.johnhartford.com/ (h.n)