GOOD SWELL JOURNAL /

風に吹かれて

この冬、葉山の隣にある秋谷というところに引っ越した。浜辺から今度は海の見える丘の上だ。水平線が一望で眺めは好い。ただそれだけで引っ越すことに決めた。しかし、住んでみるまで気が付かなかったが、丘の上に住むということは、風との戦いだった。海辺は湿気があるとか、砂が家の中に入り込んで面倒だという話を聞きながら、海辺に引っ越しても快適そのもので、そんなことは気にもならなかった。しかし、丘の上は、海辺の家ではさほど感じない風でも、家が揺れるほど吹いていたりするのだ。
引っ越してすぐに行なったのは家の補強と雨漏りの対策だ。普通の雨ならいいが台風のような横殴りの雨だと、家が揺らされているせいか、あらぬところから雨水が入り込んでくる。母屋はかなりしっかりと作られているので大丈夫だったのだが、仕事部屋にしようと思っていた庭の外れにある小屋が古いせいか思った以上に苦労させられる。屋根の修理、壁や床の補強と、かなり手を入れ、一応大丈夫と思っても、先日の雨では対策を講じた南側ではなく北東からの強い風だったこともあり、北側の窓から水漏れしていて、あやうくパソコンが水浸しになるところだった。
しかし、海辺の家もそうだったが、地面に近ければ近いほど、生活というものが土着的なことに思えてくる。土の上に屋根と壁を作り、床を敷いたというシンプルなところで暮らしているということをしみじみ感じさせられるからだ。虫も雨も土も、家の中に自由に入り込んでくる。また風もどんどん入ってくる。どれも過剰な時は戦いになるが、それ以外は優しく、美しくて、心地好かったりする。風と建築について書かれた本を買い求め読んでみると、大昔から、日本の各地に風と戦いながらも暮らす工夫というのがあって、それは生活の知恵の結集のようなものでもある。気候風土の中でそれが美しい景色にも変わる。そんなことを見つめていると、まだまだいまの苦労などしれたもので、自然との付き合い方を教えてもらっているようなものだ。決して安心などのない楽しい生活というのだろうか、まだ春が始まったばかりなのだが、もう秋の台風対策を考えている毎日も、ちょっとは面白い。(H.N)