GOOD SWELL JOURNAL /

下田の蕎麦屋

先日伊豆の下田に遊びに行ってきた。下田は海がとてもきれいで温泉があり食べ物もおいしいので、毎年数回訪れている。
下田に行くと必ず立ち寄る蕎麦屋さんがある。そこは蕎麦の味はもちろんのことだが、店の作りや女将さん、娘さんの気使いなどもとても良く、ここに来ることが下田トリップには欠かすことができない楽しみになっている。そして、そこで昼間から酒を飲み、蕎麦を食べるととても幸せな気分になってくる。 この蕎麦屋は日本家屋の1軒屋を利用していて、室内に置かれている程よい調度品などからも店主の心意気が感じられる。
特に店のところどころに置かれているあまり見かけたことのない植物は、明らかに年季が入っていることが伝わってくる。
先日行ったときも、細い枝の先に造花のような筒状の小さいオレンジ色の花が咲いている見たことがない植物が、床の間に飾られていた。女将さんにその名前を聞くと「ミツマタ」という中国原産でジンチョウゲ科の植物であることが分かった。
江戸時代に紙の原料として中国から持ち込まれた落葉樹で、枝が三つに分かれることからこの名前がついたそうだ。柿本人麻呂も万葉集でこの可憐な花をいとしい恋人にたとえ、歌を読んでいる。
ここの店主である旦那さんが、植物好きでどれも時間をかけ丁寧に育てられていた。
僕自身も家でいくつか育てていることを伝えたら、株分けしたばかりのマッソニアロンギペスというこれもまたあまり見たことがない植物をひとつお土産としてくれた。
旦那さんはいつも厨房にいて面識はないが、彼が打つ蕎麦の味や女将さん、娘さんの人柄、そして大切に植物を育てている姿から彼自身の人柄さえも見えてくる。うまい蕎麦を打つことと上手に植物を育てることは、そのストイックさが共通しているのかもしれない。(ht)