GOOD SWELL JOURNAL /

フキノトウのアーヴィ

この冬にどれだけ体温を奪われたのだろうか。毎年この季節、こんな気持ちに心を奪われ、いますぐに春のあるところに片足でもいいからつっこみたい。
そんな気持ちをすぐにかなえてくれるのはジィ・アーヴィの歌声だ。え、片足だけでいいの?そんな彼女の声が聞こえてくる。1986年、マレーシア東部のボルネオ島生まれの女の子。17歳のときギターを独学でマスターし、23歳でデビューアルバム(ZEE AVI)。ここにあるのはセカンドで、ジャック・ジョンソンが設立したブラッシュファイアー・レコーズからのリリースといえば、彼女のスタンスが少しわかるのでは。

 亀はゆっくり動くよ
 自分の生活のリズムに満足しているんだ
 フラミンゴは優雅にエレガントに足をはこぶよ
 自分がとくべつな存在だってわかっているんだ
 あなたが立ち止まることができないのなら
 せめてなにかに微笑んでごらん
 時には自分の感覚を思いおこさないとね

彼女のウクレレにつられてはじまる「ザ・ブック・オブ・モリス・ジョンソン」はシャーディの声にある色香をそぎ落とし、オーガニック仕立てにした声といったらいいだろうか。それとも、メランコリックになりすぎないメランコリーにノスタルジックになりすぎないノスタルジィーをかぶせた、そんなあたたかな声の揺らぎにのせ、生き物と彼女自身との対話で聴く者にちょっとした疑問をなげかけ、自分らしく居ることのできる場所へ誘う。このあたりに彼女の魅力がひそんでいる。
唯一マレー語で歌われる気持ちのいい「シィボー・キタ・ナンギス」隣接するインドネシアの庶民に支持されているダンドゥットの節回しやハワイアン・ミュージックの影響が多分にあり、ボルネオの地を地球儀で再確認してしまった。
しかし、その南限は知らないが、ふっくらまるみをおびた彼女の顔はまるでフキノトウ。ジャケット写真をながめながらそんなことを思っていると、スローなレゲエナンバー「ロール・ユア・ヘッズ・イン・ザ・サン」はジェームス・ブラウンも顔負けだ。歌詞はこのタイトルフレーズと「サンキュー・サン」このふたつだけの繰り返しで、またしてもあたたかな揺らぎへと誘う。もしかして、これは土手で雪解けに顔をのぞかせるフキノトウのテーマソングではないか。(hy)