GOOD SWELL JOURNAL /

ガジュマルの樹の下で

ここ数年夏休みを利用して奄美を訪れている。奄美は鹿児島から南に約380キロ、沖縄から北へ300キロに九州本土と沖縄のほぼ中間に位置し、周囲をサンゴ礁で囲まれている亜熱帯の島だ。羽田からは直行便で約2時間30分。そこに降りると東京では、想像できないとてもゆっくりとした時間が流れている。僕の中では、ハワイで言えば沖縄がオアフ島で、奄美はハワイ島という感じだ。
2時間30分でハワイと同じような時間の流れを感じられるのであれば決して悪くない。これが毎年のように訪れてしまう理由かもしれない。ここに自生する植物達も魅力的だ。南の島を彷彿とさせる色鮮やかなハイビスカス、画家、田中一村も好んで描いたアダン、そして島では長生きの象徴としてどの家の庭先にも植えてあるソテツなど、どれも奄美に来るたびに魅せられていく植物だ。そしてもうひとつ象徴的な植物といえばガジュマル。アンブレラツリーとも呼ばれるこの樹は、強い日差しを遮り、人々に心地良い木陰を作ってくれる。子供達にとってもその曲がりくねった幹は格好の自然が作ったジャングルジムとして最適なものになる。
今回の旅でも海辺の知人宅にある大きなガジュマルの樹の下で、夜、酒を楽しむことができた。樹の上にスポットライトひとつと月明かりのみ。そして奄美名産の黒糖焼酎を味わった。かすかに聞こえる波音と気持ちのいい風、そして美味い酒、本当にシンプルでとても贅沢な時間を過ごすことができた。その時間の中でふと島唄が話題になった。島唄の唄者は島で普通に暮らしてその中で歌うべきだという意見だった。島唄は島での日常の楽しさや、悲しさを歌うのだからそこで暮らしていなければ本当の島唄にならないという。実際この島の多くの唄者は別に職業を持ち特別な時だけにその唄をみんなに聞かせるのが本来スタイルらしい。僕らのモノ造りにも共通していて、大切にしなければいけないことを改めて気がつかせてくれた。
奄美には何も無い。何も無いだけに本当に大切なものを僕に見せてくれている。自分にとっての自己確認がこの旅には大きな土産となっている。(ht)

* ガジュマル くわ科
海岸近くの隆起石灰岩地域に見られる常緑の高木。幹は直立し10-15mになり、枝や幹からは気根をたらします。気根は地面に着くと太くなり幹を支える支柱根となります。同じくわ科の菩提樹の下でお釈迦さまは悟りを開いたといわれています。