GOOD SWELL JOURNAL /

ウタさんとヨシコさん

コーラ片手にフリーマーケットを歩き始めて1時間、陽はすでに肌をじりじり焼き続けている。何も収穫がないなと思っていたら、ふと、ひとつのスペースに目が止まった。そこは日系人のおばちゃんがふたりで開いているよろず屋のようなところだった。いらなくなった日用品、服、庭で採れたような果物や植物。これといって欲しいものはないのだが、なぜか気になって話しかけてみると、おばちゃんたちは訛った日本語で、「どこから来たの?」、「ひとり?」、「連れ合いは?」、「淋しいね」、「楽しんでいきなよ」と祖母のような優しい口調で包み込んでくれた。ふたりは、ウタさんとヨシコさんという名前で、「写真撮ってもいい?」と訊くと、「いいけど私たちは駄目よ」答えた。「でも、おばちゃんたちがいいんだよね」、「駄目よ、カメラ壊れちゃうよ」。そんな時間が止まったようなギャグを言われながら、シャッターを押した。手ぶらで去るのもなんだか悪いので、ミカンらしきものを1ドルで購入した。「またおいでよ」、「元気でね」Aloha means until we meet again.ウタさんとヨシコさんは本当にアロハなひとたちだった。その温かさはどこからくるのだろ。帰る車の中でミカンを食べつつ考えた。「やられたなあ、おばちゃんには」ミカンは種も多くパサパサしていてまずい。反則だよなこれはと思いつつ、ふたりの笑顔を脳裏に浮かべると、こっちもアロハな気分になってきて、どこまでも青空が広がっているような道を、いつまでもにやにやしながら車を走らせていた。(ht)